【千葉の活力を追え】仕事に直結した教養を身につけ学芸員の資格にも挑戦「学びたい」を実現する放送大学
2018年01月26日金曜日
放送大学教養学部全科履修生(千葉学習センター)古家 奈生子氏
古家 奈生子/ふるや なおこ
東京都生まれ。下町・葛飾区で生まれ育った生粋の江戸っ子で、何事にも物怖じしない性格。職場での異動がきっかけで見識を広げたいと思うようになり、2011年に放送大学へ入学。
2016年春は教養学部への再入学を果たした。
放送大学(本部:千葉市美浜区)は、生涯学習機関として1981年に創設された。テレビやラジオ、インターネットを活用した通信授業をはじめ、全都道府県に設置された学習センターでは一般大学と同様に対面式授業(面接授業)も行われている。放送大学で学んだ学生はこれまでに延べ130万人以上。40~60代を中心に現在も全国で約9万人が勉学に励んでいる。
古家奈生子氏は2011年10月、教養学部の全科履修生として放送大学に入学。各地の学習センターで行われる面接授業も積極的に受講。仕事と勉強を両立しながら、卒業時には学芸員の資格を取得した努力家だ。そんな古家氏に、放送大学への入学を決意した経緯や在学中のエピソードを伺った。
学習センターでは、公開講演会やオープンキャンパス(学校説明会)も開かれている。
■古代史との出会い 責任者としての苦悩
古家氏の趣味は旅行と博物館巡り。十数年前、出張の合間に立ち寄った法隆寺で飛鳥時代から1300年余り続く歴史の息吹に感銘を受けた。時間さえあれば飛鳥時代の関連本を読むなど、すっかり古代史マニアになっていたのだ。
都内の物流会社に勤務していたある日の事、管理職への昇進が決まった。チームをまとめるというポジションは責任感の強い古家氏にとって充実した日々だったが、同時に自身の未熟さを痛感していた。「部下を指導するにも、責任者同士で話すにも、自分の知識の浅い部分が気になってしまって」会社勤めを続けながら勉強できる環境はないものか。次第にそんな思いが強くなっていた。
■多彩な授業に魅力を感じ放送大学に入学を決意
仕事に直結した知識を得たい。どうせ勉強するなら古代史をより専門的に学びたい。そんな「学びたい」欲求が大きくなっていた頃、書店で放送大学の願書を目にした。様々な分野をカバーする授業のラインナップや授業料に魅力を感じ、入学を決意した。
放送大学の大学課程は、教養学部教養学科のみの1学部1学科。教養を養うと共に実生活に即した専門的な知識を得ることが目的だ。古家氏が入学した「人間と文化コース」の他、学部内には「生活と福祉コース」「心理と教育コース」など6つのコースが用意されている。履修スタイルは大学卒業資格を満たす「全科履修生」や、好きな科目だけを選べる「選科履修生」など4タイプ。全科履修生は4年以上在学し(最長10年)、所定の124単位を修得すると教養学士の学位が得られる。
平日はフルタイムで働き、土日は学習センターで面接授業。そんな生活が果たして続けられるかという不安もあったが「学んだ事がすぐ仕事に活かせ、自信が持てるようになりました。
それに、勉強に集中していると日頃のストレスから解放されていくんです」入学から程なくして勉強のペースをつかみ、学ぶ事の面白さを実感。知識を得る事で価値観がどんどん変わり、豊かな気持ちになった。そんな変化が「もっと勉強したい」という原動力に繋がった。
約60人を収容する千葉学習センター内の教室。ここで多彩な面接授業が行われている。
■学芸員資格を取得そして再入学へ
入学後、古家氏は学芸員資格の取得にも挑戦した。博物館巡りが趣味だった事から、リタイア後には博物館で働いてみたいと思うようになったからだ。週末の面接授業では、学習センターが行うフィールドワーク型授業にも積極的に参加。東京、神奈川、群馬をはじめ、奈良や九州にも足を延ばした。各地の博物館で開かれる授業では学芸員が講師となる。古家氏にとっては夢のような時間だった。資格取得に必要な
授業を選択し、さらに4年次の2015年7月から翌3月にかけては月1、2回のペースで岐阜女子大での実習にも参加。卒業研究「古代都市飛鳥を『万葉集』からたどる」と並行しながら学芸員の資格を取得し、2016年3月に卒業した。そして4月、さらなる見識を深めるため「社会と産業コース」に再入学した。「卒業と資格取得を目標に走り続けながら、4年間で勉強する楽しさを知りました。でももっと知りたい事が私にはあります。学びたいという欲求があり、それを叶えられる場所があるって幸せな事ですよね」。