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人を育て、文化の拠点に

成田・富里・多古町・酒々井・香取

2013年09月01日日曜日

オニオン記者投稿

2013年09月01日日曜日

人を育て、文化の拠点に

石戸氏
歴史に残るソロバン教室の確立を目指す

株式会社イシド 取締役会長
石戸 謙一氏
 
就職に有利、といわれていたかつてのソロバン教室ではなく、脳の活性化を目的としたソロバン教育を確立させた石戸氏。
子どものやる気を最大限に発揮させるため、スポーツなどでも用いられるイメージコントロール法を採用し、「能力開発」「意欲向上」「数の理解」「脳の健康」の成果で世界に注目されている。
多教室展開は地域の雇用を促進し、地域活性にも貢献して、グレートカンパニアワードで顧客満足賞も受賞した。
 

保護者のニーズにマッチした教育法

 
「3度の飯よりソロバンが好き」―取材時にいただいた名刺には〝生涯無休〟〝珠算界の異端児〟などの言葉に並んで大きくそう書かれてあった。
幼少期にソロバンと出合い、高校時代は珠算部のキャプテン。
ソロバン漬けの青春でさぞ充実した日々だったかと思えば、「全く楽しくありませんでした。スパルタな教え方とキャプテンとしてのプレッシャーで思うような活動ができず、キャプテンなのに全国大会の選抜に入れないこともありました」という。
 
卒業後は金属加工会社に就職し、いったんはソロバンとは無縁の生活に。
しかし人に勧められて、ソロバンの練習を再開。
高校の時とは全く違う環境のため、楽しく練習ができて大会にも出場した。
結果は埼玉県で3位。
その翌年も代表に選ばれている。
 
ちょうどそのころ、学歴重視の職場に疑問を抱いて退職を決意。
離職後は反骨精神から大学入学を志し、大学生になった。
しかし学生結婚をした石戸氏は、「家族を養うため、何か収入源はないか考えました。そこでソロバンを教えることを始めました」再びソロバンに関わって、教えることの楽しさを見出し、大学時代にたくさんの生徒を育て、卒業後は就職せずそのまま経営者となった。
石戸氏のそろばん人生の本格的スタートである。
 
ソロバンは昭和50年代をピークにその人口は10分の1以下になったといわれた。
いわゆる衰退産業である。なぜここまで衰退したのか。
「理由としては、少子化になった、実務で使わなくなった、受験に必要ない、など様々なことがいわれています。それらを解決するため、ソロバンを側面だけの価値ではなく能力開発、社会教育、しつけのツールとして活用し、人間形成に役立つものとして変換していったのです」
 
例えばソロバンに対する先入観を払しょくさせるため、それまでなかった入学説明会を開催。
幼稚園から始められるソロバンの効果について、小学生で人並み以上の記憶力、集中力を高められることを説明した。
独特のイメージトレーニング法を取り入れ、子どもの未知の領域を引き出し、次々と優秀な生徒に育てていった。
さらに入塾した親子が安心できるよう、授業中の教室内に親も見学自由に。
「親御さんも授業を見ることで、塾のないときに家で復習させてくれるんです。そうすると授業の時には、前の授業のおさらいに時間を取られることなく次のステップに進める」そうした親や生徒とコミュニケーションがとれる透明性のもった運営だからこその安心感。
さらにイメージトレーニングで成果がはっきり出ていることから、瞬く間に「いしど式」への地域の評判は上がっていった。
 
また世間では数年前から能力開発ブームが起こり、〝ソロバンが右脳を活性化し、イメージトレーニングになる〟と注目しはじめていた。
そもそもそうした効果を謳っていた石戸氏のもとには、当然のように生徒が集まってきた。
「右脳訓練をやっている石戸珠算学園に学ばせたいと、それまで徒歩や自転車圏内だけだった生徒が、親の運転で遠方から、車で通ってくる生徒も増えました」そうした時代の後押しもあって、何もなかった白井の地に石戸珠算学園という画期的なソロバン教室があると、全国的に注目されるようになった。
 

 

人を育て、文化を守るソロバンを世界に

 
石戸氏のチャレンジはその後も続き、インターネットが未発達の2000年ごろから、インターネットソロバン教室を開校。
e―ラーニングなどまだ認知されない頃だったが、時間や場所に束縛されないその画期的なアイデアで大人もネットでソロバンを学び始めた。
さらにそこから派生して「珠算教師資格制度」もスタート。
資格を取得した人たちが石戸氏の運営ノウハウのもとで次々と自分たちのソロバン教室を開校し、グループの輪が徐々に全国へと発展し始めた。
「はじめはネットを使った事業展開に莫大な運営費がかかってしまい苦戦しましたが、今はそのシステムが人を育て、グループの発展につながっています」
さらに2011年、白井そろばん博物館を開館。
古今東西、国内および世界各地のソロバンと貴重な関連書籍約1000点がズラリと並ぶ。
すでに数千人の来館者がいるが、石戸氏は同館を利益のためにオープンしたわけではないという。
 
「ソロバンを生活や教育文化等の各方面から考察研究し、ここまで揃えているところはほかにありません。利益よりもまずはその意義と、また地域活性化の一環として街づくりのコミュニティーセンターとして稼働させることを目的としています。弊社にとってはグループの広報塔としての役割もあり、メディアに取り上げられるなど注目されて、さらに広くいしど式の理解へとつながるんです」
 
2年前に経営はバトンタッチし、会長職になり少しだけ業務に余裕ができたところで今はPR活動に力を注いでいるという。
中米・グアテマラや東欧・ポーランドなど、着実に国外へのソロバン啓蒙活動も推し進めている。
人を育て、街をつくり、ソロバンを文化的拠り所としての歴史を、石戸氏は築き上げていく。
 

『白井そろばん博物館』

 
千葉県白井市復1459-12
TEL:047-492-8890
http://www.soroban-muse.com/
 
大阪ソロバン、名古屋トヨタソロバン、堺ソロバン、京都ソロバンをはじめローマ、ハンガリー、ポーランドなど世界各地のソロバンのほか、ソロバン付き銭箱のような特殊なものまで貴重なソロバンが所狭しと展示されている。
白井市の店舗と共同開発した「そろばん饅頭」の販売や、ソロバン愛好家による絵画や彫刻作品などの展示も。
8月25日(日)にはジャパンカップ計算選手権大会、そろばんアートコンテストなどイベント盛りだくさんの「ワールドそろばんフェスタ2013」が開催される。