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ローカル線の価値を変えファンビジネスで地域を活性化

九十九里・大網

2014年05月08日木曜日

オニオン記者投稿

ローカル線の価値を変えファンビジネスで地域を活性化

2014年05月08日木曜日

いすみ鉄道株式会社 代表取締役社長
鳥塚 亮(とりづか あきら)氏

1960年東京都生まれ。
子供の頃からの鉄道ファン。
学習塾、航空会社の勤務を経て2009年、いすみ鉄道の社長公募で採用される。
画期的な経営手法でいすみ鉄道の存続に道筋をつけた。
著書に『いすみ鉄道公募社長』などがある。

 
“菜の花列車”として知られてきた、いすみ鉄道。
今、このローカル列車に全国からの注目が集まっている。
仕掛け人は、いすみ鉄道代表の鳥塚亮氏。
鳥塚氏は5年前、公募で社長に就任した。
その後女性をターゲットにした“ムーミン列車”を走らせ、運転士の募集では応募者が自腹700万円を支払って資格取得してもらうなど、次々に話題を独占。
「ここには“何もない”があります」「乗らなくてもいいですよ」と公言する、そのねらいを伺った。

乗車しても赤字 ならばすべきことは何か

千葉県のほぼ中央を走るいすみ鉄道は、全長26.8キロの典型的なローカル列車。
かつて国鉄木原線として国が運営していたが、1988年の廃線と同時に、第三セクターとしていすみ鉄道が引き継ぎ開業した。
しかしその後も存続は危ぶまれ、同社は社長を公募して再建のための斬新なアイデアを取り入れてきた。
鳥塚氏もその一人であり、いすみ鉄道が存続できるかどうかその判断期限が9カ月後に迫った2009年6月に就任した。

「若い頃は新幹線の運転手になりたくて、国鉄への就職も希望しました。しかし時期的に国鉄が再建計画を立てているときで断念したんです。そんな経緯もあって、状況はどうあれ、まずは再建のために努めました」。

鳥塚氏の言うように、就任後はすぐにムーミン列車を走らせ、キャラクターの物販で売上の前年比二桁増を実現。
なんとか当面の存続を決定させた。

もちろん数字的にはまだまだ不足しているため、その後も新鮮な地元千葉産の食材を大きなお重に入れて提供する「伊勢海老特急」や、ローカル線ではありえない夜行列車の企画などを次々と立ち上げ、大成功のままに終わらせている。

「沿線地域は決して人口が多いわけではないので、住民が全員乗っても赤字です。そこで観光客をターゲットに、魅力ある物販の売上や企画列車で乗客率を上げるなどを手始めに、いすみ鉄道自体の価値を追求していくことが必要です」。
 
周辺には目ぼしい観光スポットもない。

観光客には〝いすみ鉄道に乗る〟こと自体が目的となるようにし、同社に対するファンビジネスさらに展開し続けている。
さらにいすみ鉄道では2010年に、キハ52型という国鉄時代の現役では最も古いタイプの車両を導入。
週末には多くの鉄道ファンがカメラを片手に大勢やってくるようになった。

世代を超えていすみ鉄道に乗車

ここまで革新的に物事を進めるためには、理解ある協力者がなければ実現は不可能だろう。

「いすみ鉄道には、地域の有志による応援団がいます。もともと菜の花列車といわれてきたように、沿線に菜の花を植えたり、駅の掃除をするボランティアはいたのですが、応援団は周辺の自治体や商店街などといすみ鉄道をつなぐパイプ役として、イベント開催などに尽力していただいています」。

そのように地域の人たちが一緒になってローカル線のイベントに関わり、そこへ観光客が集まってくると、住民たちが自分たちのいすみ鉄道を支えているという意識が高まり、地域にも誇りをもてるようにもなるという。

また彼ら応援団の様子をみると、笑顔があふれている。

「結局はできるときに、楽しく、無理なく関わるのが一番なんです。楽しそうなところに人は集まります。みんなを笑顔にすれば、また自分にも返ってくるんです」

よさがわかる人だけ来てください――そういう鳥塚氏には、裏を返せば世代を超えたいすみ鉄道のよさを伝えたいという意図がある。
鉄道ファンにPRするサービスも、単にその場の集客目的のみならず、実は鉄道が親子の会話で共通項になりやすいから。
そして家族でいすみ鉄道に乗った楽しい記憶は、その子供が大きくなった時に、さらに次世代へと伝わっていく。

豪華な食事の出る企画列車の模様。

 
鉄道がなくなると、地図上でその地域の存在感は瞬く間になくなり、線路がなくなれば二度と戻ることはない。
いすみ鉄道は廃線案が出ても、地域に支えられながら持続させ、ようやく今までの努力が実を結びつつある。

「これからは大いにいすみ鉄道を利用して、地元の方々に潤ってほしいですね。うちは第三セクターですから、会社への利益はもちろんですが、地域に還元していくのも役目です」と、鳥塚氏はすでに次なるビジョンを見据えていた。

 

『いすみ鉄道』


国鉄木原線を前身に昭和63年3月から運営を開始。
大原~上総中野間を単線軌道で走る。
大多喜駅に本社があり、いすみ鉄道の関連グッズを販売する売店なども併設。
「い鉄揚げ」「キハカレー」「いすみ鉄道もなか」など電車をモチーフにした商品や、車両に使用される行き先プレートなどの列車関連グッズ、またはムーミン商品などが並ぶ。
観光用に1日フリー乗車券(大人1,000円、小人500円)も。

住所:千葉県夷隅郡大多喜町大多喜264
TEL:0470-82-2161
http://www.isumirail.co.jp/

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