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【第2回】郷土の自慢 地元食材の魅力

千葉県全域

2014年01月22日水曜日

オニオン記者投稿

2014年01月22日水曜日

【第2回】郷土の自慢 地元食材の魅力

上質な週末
さまざまな郷土料理のかたち

 
「郷土料理が残り続けているのは、健康や文化継承的な意義はもちろんですが、それ以外にも理由はあります」と千寿恵さんは言う。
例えば『冬瓜とサンマのおつゆ』という東金地域の郷土料理がある。
冬瓜とサンマを鍋にした文字通りの一品だが、北側に台地の畑をひかえ、南に広がる水田に恵まれたこの地方では、昔から豊かな農村として東金街道に面しているために、九十九里地方から自転車やバイクで移動する行商人のサンマやイワシなどの新鮮な魚介類が手に入った。
とくに農家は秋の収穫の頃は忙しく、大鍋に自家製の冬瓜と行商人直送のサンマを一緒にして、タップリの具沢山な汁物にし、簡単に栄養補給ができるものを考案したとされている。
「農繁期は台所で調理する間も惜しい時期です。これであれば味が染み込むことで、数日たってもまだ食べられます。作業の合間に時間をかけずにタンパク源などを効率的摂取でき、人々の生活において必要に応じて生まれたメニューもあるのです」
また銚子では、『海藻こんにゃく』という郷土料理がある。
これも土地で取れる海藻を上手に使い、飢饉の際に地域の人々が飢えをしのいだ名残であるという。
人々の命を守り、生活を守るために必然的に生まれたものも、その土地の財産であり郷土料理として伝えられているのだ。
 

 

 

これからの郷土料理のありかた

 
全国の郷土料理を紹介し、広く国民の農山漁村への関心を高める機会となるよう、農林水産省が2007年に選定したものに、「農山漁村の郷土料理百選」がある。
千葉県では太巻き寿司とイワシのゴマ漬けが選ばれており、郷土料理『千寿恵』では、毎日つきだしに太巻き寿司が出されている。
「太巻き寿司は本来大きめで、そこに様々な絵柄になる素材が巻き込まれていますが、お店ではつきだしで楽しめる小ぶりなものにしています」と千寿恵さん。
太巻き寿司はのりを用い、酢飯と季節の野菜や魚を巻いたもので金太郎飴のように切り口の絵柄を楽しむことができる。
千葉の豊かな食材をふんだんに盛り込み、冠婚葬祭などで作られる一方、子供のお弁当などにも入れられる親しみ深い郷土料理だ。
このように具材を変え、絵柄やサイズなども変え、様々なニーズに応えつつも本来の姿や意味合いが変わらないものも、これからの郷土料理が残っていく条件のひとつだろう。
一方でイワシのゴマ漬けは、イワシの酢漬けにゴマをまぶしたもの。
日本有数のイワシが漁れる九十九里海岸で、大量に獲られるイワシを長く保存できる方法の一つとして伝わってきたとされる。
食卓の日々のおかずとして、または行事食として広く知られている。
「郷土料理は、そのほとんどが保存食なんです。イワシの酢漬けもその好例であり、昔の方々の叡智が伺えますね。どんなに時がたっても、こうした有用性のある特性をもった郷土料理は、これからも変わらず残るのではないでしょうか」
また近年現れた「B-1グランプリ」なども、これからの食のあり方がみえる素晴らしい企画だと千寿恵さんは言う。
「若い方々が中心となって、みんなが美味しく楽しく食べられる場を作り出すことは、大きく地域おこしの意味合いをもつと思います。食への関心を高め、郷土料理に目を向ける機会も増えるのではないでしょうか」。
地域に元来伝わる素材を生かし、B-1グランプリの革新的なアイデアで世に認められるケースもある。
伝統と革新のバランスが、今後の日本の食のあり方を考えるうえで不可欠なのだ。
 
 

取材協力:佐野千寿恵さん

40年以上前に千葉で飲食店をオープン。
経営する「ちば郷土料理 千寿恵」を千葉を代表する名店に成長させ、郷土の文化の伝承・発展にも多方面から貢献。
日本酒学講師、フードコーディネーター、ワインソムリエ、焼酎アドバイザー、テーブルマナー講師、食育栄養インストラクターなど、酒と料理に関するあらゆる資格を取得。
食の安心安全と健康生活に大切な『身土不二』の提唱、農林水産省主催「食と農林漁業の祭典」では47都道府県の郷土料理コンシュルジュとして、現場主義をモットーに講演など幅広く活動している。
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「ちば郷土料理 千寿恵」

住所:〒260-0016 千葉県千葉市中央区栄町16-2
TEL:043-225-6688
HP:http://www.chizue.com/

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